シャルル・コッテの色など

(1か月以上前に書いていたものを下書きにためたままにしていて、展示が終わってしまった)

国立西洋美術館憧憬の地 ブルターニュ展 ―モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷を見た。twitterなどで感想を見ていると、シャルル・コッテがけっこう話題になっていて、なんとなくうれしかった。

コッテはブルターニュの農村や風景を描いた作品で知られる画家で、彼の属するグループは暗い色調の画風で「バンド・ノワール」と呼ばれていた…らしい。

学生の頃に大原美術館でコッテの「聖ジャンの祭火」(ブルターニュ展では「聖ヨハネの祭火」として出ている)を見て以来ずっと気になっていて、きっとポストカードにしたときなどにきれいな色が出ないだろうなあと思っていたのだけど、今回改めて見たら印象にあったのと結構色が違った。画面の上の方と下の方で暗さが違って、下の方は火の赤みがあって、上の方は夜空の色をしている。どちらも真っ黒ではない。
そして、最初に見たときからずっと何となく物語を感じるというか、「何かが始まりそうな感じ」を持っていたんだけれども、実はこの場面はいわゆるおめでたいお祭り的なものではなくて、死者を悼む行事なのだそうだった。……それでもやっぱり非日常の行事で火を焚いてたら、子どもだったら最後までわくわくしながら見ちゃうと思うな、と食い下がってみたりする。

「悲嘆」は、何しろ大作で目を引いていた。

collection.nmwa.go.jp

宗教画との関係については、この企画展を見た後で常設展でたまたま「キリスト哀悼」という作品を見て、あっこういうことか…と思った。「悲嘆」のリンク先では"「十字架降下」に似ている"という指摘があったことが言われている。

後ろに見える帆が十字架のようだと解説があった。これとは別のコッテの絵(実物は見たことがない)でも、帆がオレンジ色をしているように見える。地域性か何かでこういうものなのかしら。commons.wikimedia.org

 

同じコーナーに並んでいた絵では、アンドレ・ドーシェの線画が良いなと思った。同じ人の油彩はふわっとした色と線の、きれいだけれども少しぼんやりしたような印象だった。翻って自分がコッテの何を好きなのか会場で考えたとき、一旦は、暗さ、色かな…と思ったけど、「月光を浴びる舟」は色とか関係なく良いなと感じたから、光のとらえかたが好きなのかもしれない。

collection.nmwa.go.jp

 

ちなみに、絵はこのあたりから探しました。

国立西洋美術館 所蔵作品検索 作家名一覧
https://collection.nmwa.go.jp/artizeweb/search_3_artistart.php

wikimedia Category:Charles Cottet
https://commons.wikimedia.org/wiki/Category:Charles_Cottet

それと、国立国会図書館デジタルコレクションの全文検索が、予想よりもヒットする。同時代の日本でいくらか話題になっていたらしいことがわかる。べんり。

ネットで画像を探せるようになって、実物を見られなくても「知ってる」作品があったりするけど、やっぱり目の前に見る実物の色味とか雰囲気を感じることは全然違っている。あと、たまたま日本にいくらかのコレクションがあるため、ある程度定期的に特定の作品を見られるチャンスがある(西洋博物館にあるから常設で見られるかもね~という安心感はとても大きい)けど、ネット検索して出てくる画像は普通に在フランスだったりするから、「見られるもの」は必然的に偏るんだなあというのも感じるところである。

色については、目の色によって明暗の見え方が違うという話や、ヨーロッパの空の色は日本と違うという話を見かけたことがある。当然、画家たちが見えたままを描いているとは限らないわけだけど、実際のブルターニュはどんな感じなのかな。
日本人画家の作品の中に、だいぶ黄みがかった色になっているのがあって、これはもしかして見えている色が違うのかなと感じた。
山本鼎の作品のキャプションに、コッテの絵を見てブルターニュに興味を持ったと書かれていた。私も、いつか行ってみたい気もする。

ブルターニュ展全体は、面白かったけどゴーギャンの作品を見てゲリラガールズバッグで来ればよかったかもなあ、と少し思ってしまった。タヒチとはいかないまでも、やっぱり地方に対する視線があるのは感じた。

あとは、この時代の絵葉書は少し小さいんだなと思ったり(忘れていたけれどそういえば縦書きだ)、トランクの大きさを眺めたりした。

常設展は駆け足になってしまったけど、アクセリ・ガッレン=カッレラの「ケイテレ湖」という絵は、なんとなく印象的でした。
SOMPO美術館ブルターニュ展もよかった。こちらは風景がメインだった。