子ども読書の日あれこれ

森見登美彦さんトークイベント

国際子ども図書館子ども読書の日トークイベント「本との出会い、読書の楽しみ-森見登美彦さんに聞く-」に行った。
先に国立西洋美術館の「憧憬の地 ブルターニュ展」に寄って(これはまた別途感想を書きたい)、常設展にもちょっと立ち寄ったら思ったよりも時間がぎりぎりになってしまい食事の時間がなくなる。公園の中って微妙に食事に不便でコンビニもないし、国際子ども図書館のレストランはわりとのんびりやってる仕様で給仕が時間かかるよな…と思い、でもソフトクリームはすぐ出せると言われ、ラムネのソフトクリームを作ってもらう。中に小さいラムネ粒が入っててがりがりした。

森見さんのトークイベントは、幼少期から大学時代までの読書経験、図書館体験などのエピソードを聞くことができた。質疑応答パート以外は、後日youtubeにて公開予定とのこと。
ホッツェンプロッツの食事の場面がいい、食べ物自体よりもそのシチュエーションとかそういうのがいい、という話をされていた。
親戚からおさがりで児童書が段ボール箱でたくさん送られてきて、その中に好きになった本がたくさんある、という話。中学生の頃に買った文庫はキングの「スタンドバイミー」という話。質疑の際に「段ボールで送られてきた本のように降ってきた本に出会ったところから、どうやって自分で本を選べるようになったのか」というような趣旨の子どもの読書支援の観点からの質問があった。森見さんはどの質問でもわりと考え考え話してらしたけど、これはなかなか難しかったみたいで、でも、段ボール箱の本も全部読めたわけではないこと、読んでみてやめてもよく、やめて別の本を試すことができたこと、本屋さんで文庫を買った時点では自分なりのアンテナが育ちつつあったから選べたこと、などをお話していらした。
やっぱりおすすめの中から自由に選べるということは大事だよね、と感じた。

ところで、子ども読書(YAも含むが…)イベントのわりに大学時代の話もされていたため、当然のように内田百閒の名前が出てきて、生で森見さんの百閒好きトークも聞けて良かったなあ。百閒がなんか言ってるのが好き、百閒が書いてるだけでそれでいい、みたいな次元の「好き」があった学生時代の話。
森見さんが指しているのと同じことかはわからないけれども、私も、文章だけで何かを立ち上げることができるのは本当にすごいと思っていて、そのことかなと思った。森見さんの書くものでは、ときどき出てくる、箱庭的作品世界を俯瞰するような表現が好きです。「世界の果ては折りたたまれて世界の内側にもぐりこんでいる」とか「今夜のわれわれはね、この玉で覗かれた世界の中にいるんです」とか。

百閒といえば、春なので『東京焼盡』を読みたいな…という状態にある。うちにあるはずの文庫がどっかに行った、元々古本で買ったやつだしもう一度新本で買ってもいいかなというこの状況を数年続けているのだけれど、この森見さんのお話を聞いた日にフォロイーさんが古本市でまさに『東京焼盡』をお買い上げになっていて、ご縁があるなと思う。

映画「丘の上の本屋さん」

映画「丘の上の本屋さん」を見た。
イタリアの小さな古本屋の話で、店主のおじいさんリベロと移民の少年の交流がメインストーリー。
やってくる色んなお客それぞれにうまく対応し(ネオナチ?がやってくるところ笑っちゃいけないけど笑った。なにを売りつけたのだろうか)、隣のカフェの店員がやたらに立ち寄って手伝ったりして、雰囲気がとてもよかった。
お金のない少年エシエンに、売り物の漫画を1冊選ばせて貸したのがきっかけで、リベロはエシエンに勧める本を貸すようになる。
ピノキオ、イソップ寓話集、星の王子さま……すごく、趣味がいい読書好きの男性のセレクトだと思う。
本を返すときに二人はその本の感想などを話して、リベロが次の本を渡す。いい感じに物語が進む。
私にとって本を勧めるのはたいそう難しいことで、一手を間違ったら即ゲームオーバーの可能性もあると認識しているので、ハートフルなのはわかるんだけれど何かが起きやしないかどこか緊張しながら見てしまった。……エシエンと変な名前のリベロが交流を続けてくれてよかったなあ。

図書館員のアナグラムが両手に本、みたいな言葉遊びもかわいらしかった。図書館員はbibliotecarioかな?

児童書読書

子ども読書の日ということで、読みたい、読もうと決めて少し前に買った児童書を読み始めた。1975年初版で刷を重ね、私の手元に来たのは2010年の9刷(新刊で買えた)だったんだけど、紙面がなんとなく古めかしい。

『ディダコイ』(ルーマー・ゴッデン作 猪熊葉子訳 偕成社)の紙面

確かどこかで赤木かん子さんが版組が古い本はそもそも子どもが手に取らないと言っていて、その一方でいい本はいいんだから読めば面白い、という反論がある。でもやっぱりこの版組だといくら新しくても第一印象として十代の人とかには手に取りづらいかもなあ、と思う。私は大人だし読みたかったから読みますけど。